原発を使うなら覚悟を決めてもらいたい 天空の蜂

天空の蜂

ミステリー作家として広く知られている東野圭吾さんの作品を初めて読みました。

講談社から1995年に単行本が刊行された「天空の蜂」。私が手にしたのは文庫本で、2009年の第42刷発行でした。

自衛隊に納入される掃海ヘリコプターCH-5XJ、通称"ビッグB"が盗まれる。パイロットは乗っていなくて、自動航行制御(AFCS)で飛び去り、原子炉・核燃料開発事業団の高速増殖原型炉「新陽」の上空でホバリング。

犯人から「現在稼動、建設中の原発を全て破壊し使用不能にしろ。さもなくばヘリを「新陽」に墜落させる」という脅迫状が送られてくる。

この小説、良く書けています。話の展開もさることながら、原発に関する表と裏の事情を改めて確認できました。それに、原子力発電やヘリに関するマニアックな記述にも惹かれました。

CH-5XJはエアロコプター社のCH-5XEに錦重工業が開発したフライバイワイヤシステムとAFCSを組み込んだ機体。全長33.7メートル、メインローターローター径32メートルの大型ヘリで、ターボシャフトエンジンを3基搭載する。

新陽があるのは敦賀半島北端西側の灰木という場所。そこから少し南下したところに近畿電力美花原発があり、半島北端東側には敦賀原発がある。

犯行の目的は、日々の生活に原発が密接に関わっていることを日本国民に意識させ、そのことの意味を考えさることでした。無いと困るが、まともに目にするのは嫌だ、とそんなわがままは許さない。

犯人の言葉に、子供は蜂に刺されないとその怖さが分からないとありますが、3.11で日本人は大きな蜂に刺されたことになり、その怖さを認識したはず。

にもかかわらず原発を使うなら、国民は原発事故は起こるものだという覚悟を決めろ、と犯人なら言う。原発が事故を起こす確率をゼロにすることは出来ないから。

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