大石英司 作品

現代戦争を主な題材としたシミュレーション作家。自衛隊が戦争をしたらどうなるのか。登場する自衛隊は強くて優秀。特に特殊部隊”サイレント・コア”。

読んだ本

第二次湾岸戦争 第二次太平洋戦争
制圧攻撃機出撃す 大使奪還作戦
飛行空母を墜とせ 戦略原潜浮上せず
神はサイコロを振らない 尖閣喪失

第二次湾岸戦争 上

第二次湾岸戦争 上

聖地解放を大義名分に、イラク軍がサウジアラビアへ侵攻。日韓および欧州諸国からなる国連軍派遣が決定される。消極的な米国を尻目に、民航機からロシア軍の巨人輸送機まで動員、奇跡的短時日のうちに大量の兵力を展開した陸海空自衛隊。初の実戦にもかかわらず、中東の戦場では,ストライク・イーグル、九〇式戦車など最新のハイテク兵器が活躍する。だが日本国内では、潜入したテロリストによって数千人もの犠牲者が・・・・・。

(中公文庫 刊)

感想

自衛隊が国連軍に参加したら、というシミュレーション小説。登場する自衛隊は強くて優秀。女性隊員も大活躍。空自が飛ばすのはストライク・イーグル戦闘爆撃機。初陣で、コックピットでマニュアルを見ながらの実戦。そんな馬鹿な(・o・)現実の自衛隊はどうなのでしょうか。日本国内ではテロで多くの犠牲者が出る。アメリカの9.11が現実に起こった事で、今では日本国内でテロが起こってもおかしくない状況だと思う。

第二次湾岸戦争 下

第二次湾岸戦争 下

芝浦のディスコ、渋谷駅前など、相次ぐテロで戦場を上回る死傷者が続出し色を失う政府。湾岸でも、旧ソ連軍の三個師団がロシア政府の統制を離れ、その軍備ごとイラク軍に参加、国連軍は苦戦を強いられる。さらにイラクは、ソ連解体のおり密かに持ち出された戦術核弾頭を手中にしているという。核の恐怖に直面し激戦に消耗する現地部隊、テロの恐怖におびえ日々の基盤が揺らぐ国内。日本社会が体験する国際貢献の現実とは。・・・・・。

(中公文庫 刊)

感想

湾岸に派遣された自衛隊イーグルドライバー加藤曹長が最後に戦死したのは残念。二宮と成田が日本製のスペースシャトルで宇宙に行くというエピローグの展開には不満。ハッピーエンドのような終わり。2003年現在湾岸の状勢も小説とは違ってきている。米英軍が国連を無視してイラクに戦争を仕掛けた。その戦後処理が問題となって、現実は泥沼化している。復興支援と言うかたちではあるがイラクに自衛隊が派遣されそうだ。賛成出来ないが、任務を果たし無事の帰国を願う。

第二次太平洋戦争 上

第二次太平洋戦争 上

1995年11月23日の感謝祭当日、三沢・横田・厚木の米軍基地を、完全武装の自衛隊が突然襲撃,無血占領した。米国の経済的報復措置や、核燃料処理施設への米軍機墜落などに業を煮やした日本政府が、基地返還を求めて起こした行動であった。一方、奪還を宣言した米国は、先制攻撃でステルス爆撃機B-2から対地ミサイルを放つが、国産VTOL艦上戦闘機「海燕」によって撃墜されてしまう・・・・・。

(徳間文庫 刊)

感想

登場するのは93式艦上戦闘攻撃機「海燕」。国産で垂直離着陸、ステルス性能、運動性能、航続距離等で優れた戦闘機と言う想定。これが秘密裏に国内で開発、生産される。日本経済は元気で、米国と経済摩擦などが原因で話がこじれ戦争になり、「海燕」の活躍で大きな戦果を上げる。登場する自衛隊は優秀。登場する首相は芦原首相。これは某知事さんがモデル。この知事さんが首相になったらあり得る話かも。優秀な武器を手に入れると強気になる人が多い。特に政治家、偉いさん。

九十三式艦上戦闘攻撃機「海燕」について

小説タイトル「第二次湾岸戦争(大石英司著)」に登場。国産(日本独自)垂直離着陸戦闘攻撃機。開発期間わずか三年。アメリカのATF F-22と同程度の性能と思われるが海燕はスーパークルーズは出来ない。しかし垂直離着陸が可能。これは小さな船や日本のような狭い国土での運用には適している。同じ垂直離着陸機ハリアーとは比較にならないほど優秀なようだ。小説にはATF計画でF-22との採用争いで敗れたF-23(YF-23)が登場しF-22は登場しない。

以下小説文より
形状は機首のコックピットの真下に、小さなカナード翼があり、その後ろ、胴体のほぼ中央に台形状の、途中で切り落としたような主翼がある。その翼の中には径の大きい真円の穴があり、回転するリフト・ファン・ブレードがある。リフト・ファン翼とエンジン排気口の丁度中間辺りから、外側へ傾いた、二枚の尾翼が延びている。航続距離、ステルス性能、空戦性能、多目的使用度の点で優れた垂直離着陸戦闘機。

スペック 全幅14m/全長22m/自重15000kg/最大垂直離陸重量25000kg/短距離離陸重量30000kg/経済巡航速度M0.89/最高速度M1.9/VTOL時航続距離4600km/最大戦闘行動半径、含む滞空1時間2000km/兵装は8発、爆弾創に搭載

第二次太平洋戦争 下

第二次太平洋戦争 下

日米経済界トップが平和工作に奔走する最中、米軍第7艦隊が政治的事情で日本の防衛ラインを強行突破した。無弾頭の対艦ミサイルでこれを迎え撃ち、米軍のイージス艦,空母「インディペンデンス」のほか、数多くを葬り去った自衛隊だったが、その腹中は両軍の被害を最小限に止めることと、戦争の政治的解決にあった。しかし、徒に時を費やす頑迷な両国首脳のために、戦局は最悪な方向へと進んでいく・・・・・。

(徳間文庫 刊)

感想

国産戦闘機「海燕」はすばらしい飛行機。凄腕の空自パイロット操縦機が大活躍。しかし米国の大量の兵器にかなうはずは無く、その機の最後は悲しい終わり。両国首脳の意地の張り合いで始まった戦争は陸海空で本格的展開。納得いかない理由で始まった戦いでも両軍とも勇敢に戦って死んでいく。あまりにも悲しすぎ。その悲惨な戦いは青森近辺で展開され、東京ではいつもどおり。そんなバカな、と思いながらも今の日本ならあり得る。戦争の悲惨さが十分伝わってくる作品。

制圧攻撃機出撃す

制圧攻撃機出撃す

八丈島西方に浮かぶ禄魔島。ここに国際麻薬組織が市民多数を人質にし、政府が押収した六十億のコカイン返還を要求。返答期限は四十時間後。が、この島は要塞として知られ、海上からの潜入は不可能!外務省領事作戦部<F2>は人質救出作戦に向け、装甲車と二十ミリバルカン砲、一〇五ミリハウザー砲を搭載した空飛ぶ軍艦<ブルドッグ>を出撃させた!

(祥伝社 刊)

大使奪還作戦

大使奪還作戦

「条件は何だ?」駐比大使・前川は新人民軍のバードク大尉に詰め寄った>ルソン島北部で、反政府ゲリラNPAによって前川と商社角紅の社長が拉致された。ゲリラ側の日本政府への要求は海洋リゾート計画の即中止と一億ドル。テロリストとは交渉せずの方針を出した政府は空飛ぶ軍艦制圧攻撃機に出撃を命じる。が、嵐吹き荒ぶ南海には恐るべき罠が!

(祥伝社 刊)

飛行空母を墜とせ

飛行空母を墜とせ

制圧攻撃機<ブルドッグ>の乗組員に緊急命令が下った。原子力を搭載した米軍極秘の巨大飛行空母<アナハイム>が、太平洋上で制御コンピュータを謎のハッカーに乗っ取られ、日本に進路を向けたのだ。到達まであと四時間。果たして、機内の人質五十名を救出し、危機を回避する秘策はあるのか?機長飛鳥の指揮の下、ブルドッグは曙の洋上に飛び立った!

(祥伝社 刊)

戦略原潜浮上せず 上

戦略原潜浮上せず 上

部屋数八百以上、千人以上の乗組員、カジノ、銀行までを備えた一大都市、豪華客船クイーンエリザベス(QE2)が遭難を装った元米海軍特殊部隊の兵士によりシージャックされた。しかも、ソヴィエト製の新型ミサイルを搭載したハリケーン級戦略原潜レニングラードと呼応した作戦だった。QE2には政界の大物、天野進や米大統領ワトキンスの娘夫婦の姿が。東京湾に近づく両艦に米・グリーンベレー、海上自衛隊の攻撃が命ぜられた!

(徳間文庫 刊)

戦略原潜浮上せず 下

戦略原潜浮上せず 下

米軍グリーンベレーの人質奪還作戦は、失敗。国家安全保障局のムーアヘッド提督は、事件の背後にCIA長官と狂言的な反共団体ドネリー財団が絡んでいることを大統領に告げる。一方、ソヴィエト国内でもQE2のシージャックに呼応して、民族主義者が蜂起。ソヴィエト政府は亡命したガモフ博士が搭乗するレニングラードに戦闘機を差し向けた。東京湾を舞台に、米ソ日の思惑がからまり、ついに核ミサイルが・・・・。

(徳間文庫 刊)

感想

物語の舞台は海中海上がメインですが空モノも少し登場します。航空自衛隊第七航空団百里基地所属第204飛行隊Aフライト・パイロットの新妻優司三佐と君島章一尉が駆るF-15が、ソヴィエト空軍の3機のスホーイ25フロッグフットと東京湾上空でドッグファイト。新妻三佐が最後に使ったのはMK-20クラスター爆弾だった。また、話の終盤ではレニングラードから発射された5発の核ミサイルの内1発をAIM-7スパロー空対空ミサイルで撃ち落します。

神はサイコロを振らない

神はサイコロを振らない

1994年に宮崎から羽田に向けて飛び立った報和航空402便 YS‐11が、2004年にタイムトラベルして来て羽田空港に着陸した。この事は10年前に402便が消息を絶った後、引金となったブラックホールの存在と量子理論によって分かっていた。そして3日後には元の時間に引き戻されることも。

そこで、戻される瞬間を利用して過去にメッセージを送ろうと試みる者がいた。神戸で大地震が起こるという警告や、地下鉄サリン事件を阻止して欲しいという願いをこめて。そしてそれは成功した。がしかし過去が変わることは無く、多くの人が犠牲になってしまう。物事全て何時も神様が気まぐれで決めているのではない。偶然ではなく必然だということ。だとしたら、未来も既に決まっていることになる。結局、402便は海に墜落していた。

(中央公論新社 刊)

尖閣喪失

尖閣喪失

中国が尖閣諸島を日本から奪い取るために魚釣島に上陸を仕掛けてきた。それを迎え撃った海上保安庁の巡視船は健闘するも、敵の紅稗型ミサイル艇が出張ってきたことで万事休す。

更に中国は、ロシアの空母を改造して就航させた旅順を現場に持ってきて、軍事力を鼓舞しようとする。艦載機はロシア製のSu-33フランカーを元に開発したJ-15殲撃。問題はこの戦闘機が空母 旅順から飛びたてるかどうかだった。この空母はカタパルトを持たず、速度も20ノットを出すのが精一杯。J-15のエンジンパワーも満足いくものではない。機体を軽くするため武装と燃料を極力減らした殲撃は、世界中が注目する中、パイロットの命と国の名誉をかけて発進する。

これは2012年の作品。今では中国の空母運用能力もアップしているはず。小説はもちろんフィクションですが、尖閣喪失、現実に十分に有り得ると思います。

(中央公論新社 刊)