白いパスポート 生島治郎

生島治郎さんの作品「白いパスポート」を読みました。集英社文庫の昭和59年8月 第13刷となっている古い本です。日本のハードボイルド小説の育ての親でありパイオニアでもあると紹介される生島さん。この作品は週刊小説の昭和50年9月26日号から昭和51年1月2日・9日合併号まで連載されたものだそうです。

カバーには次のように紹介していました。

過激派の爆弾で、婚約者伊都子を失った三友商社のエリート社員日疋は、犯人グループを追ってベイルートへ飛ぶ。そこで血まみれの戦いの場を利用して、利潤追求のためヘロインの密売を行う企業上部の実体を知った。大量の麻薬をめぐって、武装集団との息づまる争奪戦がヨーロッパを舞台に展開される。

普通のサラリーマンが中近東でゲリラなどの武装集団を相手に対等以上に渡り合っていく。とても出来る事ではないと思いますが、婚約者が爆死した理由を知りたい、それを知らずに一人生きていくのはつらいという主人公の強い気持ちがそれを可能にしました。

設定はこれが書かれた昭和50年前後です。メイン舞台のベイルートは1975年に内戦状態になる直前で、その火種がこの作品内容にも大きく影響しています。

そしてイスタンブールからベオグラード、ローザンヌまでオリエントエクスプレスで話の舞台が広がります。正確にいうと、イスタンブールからベオグラードまで走っているのがマルマラ・エクスプレスで、そこからロンドンまでがダイレクト・オリエントエクスプレスと言うと作品の中で書いていました。オリエント急行といえば豪華列車を思い浮かべますが、この時代のは食堂車も無い相当古びた車両だったようで、作者は試乗してその様子を詳しく書いていました。

関連ページ:ブラック・マネー 生島治郎

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